2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02747
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
森 一代 Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
|
Keywords | 出稼ぎ / 越境 / 移民 / タイ / ラオス / 不法就労 / 国境問題 / 大メコン流域圏 |
Research Abstract |
平成20年度は、本研究が掲げる目的のうち、(1)ラオスからタイへの出稼ぎの実態把握、および(2)出稼ぎを支える制度的要因の解明を試みた。(1)については、日本国内およびラオスで文献調査を行った。そこからは、ラオスからタイへの出稼ぎの大半が、人身売買等の強制的手段ではなく自発的な労働移住として営まれていること、ただしその大部分が正規の就労許可を経ない不法就労であること、またその大半は企業等を介さず個別の渡航・越境によっていることなどが明らかになった。(2)に関しては、ラオス、タイの双方で文献調査および聞き取り調査を行い、次のことが明らかになった。まずラオス側では国外への出稼ぎを、もっぱら国境警備問題の一環としてとらえており、不法出稼ぎへの対策は主に青年同盟、婦人同盟等の党組織によって担われている。出稼ぎの大半は不法就労であるため、出稼ぎ者の多くは逮捕をおそれ、出稼ぎ終了まで帰省しない傾向にあるが、タイへの定住ではなく一定期間後の帰国を前提としている者が多い。また平成20年度は、翌年度以降の事例研究の準備として、ラオス北部ボーケーオ県で予備調査を行った。そこからは、ラオス中部、南部から東北タイへの出稼ぎだけでなく、ラオス北部からの人の流れも存在すること、出稼ぎ者が同郷者を招き寄せるチェーン・マイグレーションが安定した人の流れをもたらしていることなどが明らかになった。 以上の知見は、これまで人身売買等の人権侵害問題に偏る傾向にあったラオスの出稼ぎ研究を相対化する上で大きな意義を有する。またこうした制度面での実態把握は、21年度以降の現地調査で出稼ぎ者自身の動機づけを明らかにする上での基礎作業としても有益である。
|
Research Products
(2 results)