2008 Fiscal Year Annual Research Report
環境保護主義と緑の政治の理論的近接-アジアのネットワーク型ガヴァナンスを例に-
Project/Area Number |
08J02808
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
宮崎 麻美 Osaka University, 大学院・国際公共政策研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | グローバル・ガヴァナンス / 環境問題 / ネットワーク / 東アジア / 国際政治 / 酸性雨・大気汚染 / 淡水問題 / ヘイズ(森林・土地火災) |
Research Abstract |
2007年度の研究計画に掲げたとおり、(1)1990年代初頭から現在までの、アジアの環境ネットワークの形成の背景、(2)アクター間のダイナミクスの解明に取り組んだ。 まず、(1)について、春に、先行研究や関連資料を、研究機関、官公庁、事例の事務局(タイ、日本)から網羅的に収集・分析しつつ、社会学、行政学の文献にも注目し、分析枠組みを拡充した。また、環境保護主義と緑の政治の理論的近接を考察する論文を執筆、雑誌論文として掲載された。 (2)については、上記理論論文と淡水問題と酸性雨の国際協力枠組みの比較論文をもとに、夏に、国際情報交換(日本、英国)と論文報告(国際政治学会環境分科会研究会、21世紀COE「エージェントベース社会システムの科学創出」研究会、政治研究に対する欧州協議会(ECPR)支援のキール大学研究会にて)を実施した。秋に、環境経済・政策学会にて、アジア水環境パートナーシップにあるアクター間の調整過程を題材とした論文報告を行い、多方面からの質問やコメントにより、アプローチに対する関心の高さを感じた。本論文は、現在同学会誌にて査読中である。さらに、秋から冬にかけて、酸性雨モニタリングネットワークの政府間会合、協定化に関する作業会合、関連会合、春にアジア太平洋の国際協力枠組み共同会合にて、オブザーバ参加と聞き取り調査、国際情報交換を実施した。 本研究は、環境ガヴァナンス分野において、協力が進展し、問題の解決に向かうために、ネットワークが果たす役割と特徴を描き出す興味深いものとなった。つまり、制度設計にリーダーシップが発揮されても、伝統的なパワーの行使よりも、制度への期待、ネットワークの柔軟性、開放性が、アジア的なアクター相互の調整に複雑に作用し、認識の向上、協力の発見や進展につなかったのである。
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