Research Abstract |
本研究の目的は,認知行動療法を理論的背景にもつ,児童の抑うつを予防する介入プログラムを作成することであった。初めに,児童の抑うつに影響を及ぼす心理社会的要因の検討を行った。4府県8校の児童を対象として縦断的な質問紙調査を実施した結果,社会的スキルの下位因子である「引っ込み思案行動」および自動思考の下位因子である「自己の否定」および「絶望的思考」が児童の抑うつに強い影響を示すことが示唆された。この結果に基づき,「引っ込み思案行動」を改善することを目的とした社会的スキル訓練と,「自己の否定」や「絶望的思考」を変容させることを目的とした認知的心理教育を実施した。その結果,社会的スキル訓練あるいは認知的心理教育を単独で実施した場合と比較して,社会的スキル訓練と認知的心理教育の両方を組み合わせて実施した場合に最も抑うつ得点が減少し,7ヶ月に渡って抑うつの低減が維持されることが示された。以上の結果から,児童の抑うつを予防することを目的とした,社会的スキル訓練と認知的心理教育を組み合わせたプログラムが作成された。このプログラムの実証性を強固なものにすることを目的として,プログラム実施の前後に,自己の行動の評価と集団の評価に関するセルフモニタリングを実施し,習得した対処方略が学級において機能したか,という観点から,学級における集団の評価について検討を行った。その結果,セルフモニタリングの実施によって,どの児童が誰に対して社会的スキルを遂行したか,という集団の評価が可能になることが示唆され,プログラムの実施が学級集団の中でどのように機能し,成果をもたらすのかを明らかにすることが可能になった。以上の結果から,本研究のような認知行動療法に基づく児童の抑うつ予防プログラムを実施することが,児童の抑うつを予防するとともに,学校適応を促進させる効果があることが示唆された。
|