Research Abstract |
平成21年度は,3年間の研究計画の2年目であり,昨年度からの調査の継続,データの計測・整理,既存データの解析をおこなった。 平成21年1月より,はりまメンタルクリニック(東京都千代田区)を受診した性同一性障害患者の連続サンプルに対し,研究参加への書面同意の下,すでに調査を開始している。調査内容は,全般的メンタルヘルス,QOL,利き手,自閉症傾向,性別違和についての質問紙と,掌の撮像による指長計測である。平成22年3月現在,171名のデータが得られている。一方,性別違和を持たない対照群のデータも,利き手,性別違和,指長について,現在89名のデータが得られている。指長データについては,協力研究者8名により,大部分のデータの計測が終わっている。協力研究者8名については,測定の信頼性を確認するために,20個の共通のサンプルを全員が測定し,評定の一致度を級内相関(ICC)を用いて評価し,十分に高い一致度が得られた。 また,性同一性障害当事者の性行動に関する既存のデータを分析し,国際学会での発表,論文発表をおこなった。さちに,性同一性障害当事者の自殺関連行動(自殺念慮,自傷行為,自殺未遂,過量服薬)についての既存データを分析し,論文発表をおこなった。 日本においては,性同一性障害当事者の戸籍性別の変更が認められ,社会的な認知と理解も徐々に進みつつあるが,メンタルヘルスや心理社会的適応に関する知見は乏しい。本研究は,この分野での先進国での知見を取り入れ,日本の性同一性障害の病態・病因に迫ろうとする重要な取り組みであると考えられる。、
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