2008 Fiscal Year Annual Research Report
イスラーム神秘主義の思想と信仰に関する宗教学的研究
Project/Area Number |
08J02853
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澤井 真 Tohoku University, 大学院・文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イスラーム / 神秘主義(タサッウフ) / ディーン(宗教) / 宗教的経験 / スーフィー / アル・ジュナイド / 井筒俊彦 |
Research Abstract |
イスラーム神秘主義におけるスーフィーの神秘的道程を研究するという目的に沿って、本年度は、(1)イスラーム神秘主義に関する先行研究の読解、(2)宗教学の視点からの方法論的省察を行なった。 (1)に関して、イスラーム神秘主義の成立の契機をイスラームの外部に置くか、あるいは内部に置くかという東洋学者たちの議論からアプローチした。このことから、当初、彼らはオリエンタリズム的発想から「神秘主義」という「宗教」における高次の段階が、イスラームの内部から生じることなどありえず、外部から輸入されたものであるという偏見に満ちた態度を採ったことが明らかになった。さらに、8-9世紀にかけて活躍したアル・ジュナイドのテクストを、幾つかの版からテクスト批判を行ないながら読解した。 (2)に関して、宗教学的視点からイスラーム神秘主義を考察するために、本年度では主に、アラビア語で「宗教」を表す「ディーン」(din)の語を世界的に有名なイスラーム研究者であった井筒俊彦の議論から考察し、それらを国際学会や論文の場で提示した。彼によれば、イスラームの登場以前と以後では「ディーン」の意味に神への「服従」などのイスラーム的な意味が付加されるという。 これらの研究から、キリスト教圏で生まれた「神秘主義」や「宗教」などの語と、それに対応するアラビア語の「タサッウフ」や「ディーン」の語がもつ背景的差異、さらに研究者の思惑を理解することができた。イスラームを宗教学の視点から切り取る作業は今日の日本ではほとんど行なわれていないが、それに一石を投じた点で意義ある成果を提示した。
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Research Products
(5 results)