2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02872
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
熊崎 秀樹 Nagoya University, 大学院・理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | グラフェン / 空孔 / 電気伝導 / 磁気効果 |
Research Abstract |
ナノグラフェンにおける電気的および磁気的な輸送現象に関して、端および欠陥を含んだ系が示す電気伝導特性を調べた。グラフェンは端構造(ジグザグ端もしくはアームチェア端)によって端周辺に局在する状態が出現する事が理論的に予言され、実験的にも観測されている。更にその局在状態はクーロン斥力やゼーマン効果などの効果によって、強くスピン偏極する可能性が囁かれている。そのためグラフェンの輸送現象は局在した状態を持つ端に沿って流れると考えられ、更に端ごとに平行・または反平行に出現したスピン偏極した状態が電気伝導に寄与することが期待された。 この仮定の下、ハバードモデルと再帰グリーン関数法を用いて帯状のグラフェン、グラフェンナノリボンの電気伝導特性を計算した。その結果、端を流れるスピン偏極した電流の存在が確認され、またそれは単欠陥・単一の空孔によって容易に遮断することができた。しかし実際のナノグラフェンの端は当然ながら多数の欠陥を含んでいることが想定されるため、グラフェンの端を利用した電気伝導には多くの技術的困難が伴うと予想される。 またジグザグ端を含まない場合についても同様の計算を行ったところ、系中の空孔によって同様のスピン偏極した電流の存在が確認された。この端の形状に因らないスピン偏極の効果は今後大いに期待が持てる存在であるといえる。 本研究はスピンを応用した技術・スピントロニクスをグラフェンで実現させるにあたって、それなりに重要な成果であったと考えられる。また、必ずしも端を経由しなくても系中の空孔においても同等の可能性が示唆されている。これは端と空孔が及ぼす効果が基本的に同じであるという我々の主張を裏付ける結果であるともいえる。実験的にもスピン偏極を安定化させたり、あるいは自在にスピンを操作する手段を確立できればスピントロニクス素材としてのグラフェンの可能性を大いに広げられると考えられる。
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Research Products
(4 results)