Research Abstract |
近年,「障害と開発」分野の研究と実践の必要性が唱えられている.先進諸国とは異なる途上国の障害者の生活実態を,規地調査に基づいて明らかにすることは急務である.そこで,カメルーンにおける障害者の生活実践に関して調査をおこない,その社会的コンテクストを明らかにすることを目的として,本年度の研究をおこなった. 昨年度までに,カメルーン東部の農村社会で,狩猟採集民と近隣農耕民を対象に身体に障害のある人びとの生活実践に着目し計9ヵ月間の現地調査をしてきた.この研究を博士予備論文(修士論文に相当)として提出し,さらに出版のための書き換えをおこなっている.また,本年度11月,第19回国際開発学会で,これまでの現地調査を踏まえ,開発分野におけるフィールドワークの重要性を,『開発とフィールドワーク』という題で,共同セッションを開き研究報告をおこなった. さらに,国連主導によっておこなわれている『アフリカの障害者年(2000年-2009年)』の後押しを受け,カメルーンで活発化している政府系またミッション系の障害者団体の動きについて調査するため,平成20年11月から平成21年9月を予定にカメルーンの首都ヤウンデと東部州の農村で調査をおこなっている.首都ヤウンデでは,行政機関や国際機関での情報収集,ミッション系の慈善団体のCBRプログラムに同行しスラム街での障害者の生活調査,障害者団体の活動を調べている.一方,カメルーン東部州では,農村部の身体障害者に家で住み込み,彼らの生計活動を調査するとともに,ライフヒストリーの聞き取りをおこなっている.これらの調査により,障害者とコミュニティのかかわりを動態的に捉える手掛りになると考える. また,本年度から『アジアとアフリカのケアの実践』をテーマに共同研究をおこなっている.現在までの調査報告をかねて,2009年2月26日に,エチオピアのアディスアベバにて共同研究者と共に英語での口頭発表をおこなった.
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