Research Abstract |
これまで,カメルーン東部熱帯雨林地帯の農村部を中心に身体に障害のある人びとの生活実践を,狩猟採集民バカ・ピグミーと近隣農耕民という大きく異なる生業活動と社会関係を築いている民族集団の関係性に着目しながら,断続的に現地調査を続けてきた。一方で,調査地のようなカメルーン農村部においても,近代的な潮流にのって障害者のための公的サービスが実施されつつある。特に,カメルーンでは,国連主導によっておこなわれている『アフリカの障害者年(2000年-2009年)』の後押しを受け,都市部を中心に障害者運動の活発化や政策転換がおこなわれている。 そこで本年度は,障害者を取り巻く現代的問題に取り組むため,これまでの研究を踏まえながら地域内「ケア」に着目した。ケアが担われ,遂行される規範的・経済的・社会的枠組みのもと障害者と周囲の人びとの社会関係を検討することを目的に,カメルーン農村部に加えて,東部州ブンバ・ンゴコ県の県庁所在地および首都で,2010年6月から2月までの計10ヶ月間にわたり現地調査をおこなった。2011年3月に,『アジア・アフリカ地域研究』誌10-2号に,この研究内容を発表した論文を提出した。同年3月には,京都大学で開催された"Pre-Forum Session for the 7th International Research Meeting : The Role of African Studies for" African Crisis""で,これまでの研究にジェンダーの視点を取り入れ,障害者の生活変容とそのアクターに関する研究を発表した。 また本年度は,これまで研究協力を続けてきたカメルーン・ヤウンデ第一大学人類学教室のギマ教官に研究指導委託をお願いし,2010年6月から2月の10ヶ月間にわたり現地の大学に通いながら研究をおこなうことができた。それにより,現地調査で収集した調査事項を随時,ギマ教官と検討・修正することができ,長期にわたる現地調査がより実りのある内容となった。現地の大学に通うことで,研究者との意見交換がスムーズになり,現地の研究活動における自らの研究の意義および問題点もより明確になった。
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