2008 Fiscal Year Annual Research Report
確率的なシステム上の最適化問題に対する高速近似アルゴリズム
Project/Area Number |
08J02878
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
安藤 映 Kyushu University, システム情報科学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 有向非巡回グラフ / 確率変数の枝重み / 最長路問題 |
Research Abstract |
本年度は有向非巡回グラフ(Directed Acyclic Graph)の最長路問題について、枝重みが確率変数として与えられる場合について研究の成果が以下の3点1,2,3について得られた。1,最長路長さの分布関数の下界を得る方法についてFIT2008の査読つき論文に投稿し、採録された。この発表により、FIT論文賞およびFITヤングリサーチャー賞の受賞が決定した。2,最長路長さの分布関数を累次積分表示できることが研究開始直前に得られたことについて研究を進め、2008年度夏のLAシンポジウム、冬のLAシンポジウム、電子時報通信学会総合大会において発表を行った。また、これらの内容をブラッシュアップして査読つき国際会議であるTAMC2009に投稿し、採録決定された。3,最長路長さの分布関数の課界を得る方法について、上記1,の手法以前に発見した手法について、前年度にJournal of Discrete Algorithmsに投稿した内容が受理され、採録決定された。 1,の手法はそれ以前に発見された3,の手法に対してほとんど同じ計算時間で、最長路長さの正確な分布関数に(理論的な近似保証の意味で)より近い関数を得る手法である。この手法はそれぞれ平均最大、分散最大の長さを持つ路を求め、次に入口から出口までの路の数を求める。アルゴリズムの出力は、得られた最大平均、最大分散を持つ正規分布の分布関数を路の数だけ累乗したものを近似計算したものである。 また、2,の手法は1,3,の手法とは異なり、まず累次積分の形式でDAGの最長路長さの分布関数を表現したものである。この式表現はグラフの頂点数だけ積分計算を繰り返すことで計算できるため、積分計算が効率的に実行可能な場合を見つけることを行った。具体的には、対象のDAGのantichainの数がある定数以下で、枝重みの分布関数がいくつかの性質を満たす場合、最長路の長さの分布関数を多項式時間で計算可能である。DAGの最長路長さの分布関数を求めることは一般には難しい問題(#P完全)であるが、その難しさの本質を見極める上でこの研究は非常に重要である。 平成19年度の申請時点で研究計画では1,3,の内容を予定していたがそれに加えて2,の結果も得られたため、計画していた範囲を超えた成果が得られたと言える。
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