2009 Fiscal Year Annual Research Report
極超短光パルスを用いた光合成系エネルギー伝達機構の解明とコヒーレント制御
Project/Area Number |
08J02924
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
小澄 大輔 Osaka City University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 光物性 / 超高速現象 / 光合成 / 低次元物質 |
Research Abstract |
植物及び細菌類の光合成器官は、太陽からの光エネルギーを吸収し、高効率で電気エネルギーに変換する優れた機能を持つ。このような高効率エネルギー変換機能の発現には、光合成組織に含まれる色素分子の最適化された空間配列と電子エネルギー状態が密接に関連する。このような機能を解明することは、基礎光物性物理としての興味にとどまらず、将来的なエネルギー問題への解決策として注目されている、人工ナノデバイスを用いた太陽電池への応用も期待される。本年度は、海洋光合成系のエネルギー伝達機構に関する研究を行った。海洋光合成系の1種である珪藻類のアンテナ系は、分子内電荷移動を示すカルボニルカロテノイドを含む。この分子内電荷移動状態は、最低励起一重項状態(S1)と近接したエネルギーを持ち、珪藻類における高効率なエネルギー伝達を実現するための重要な役割を果たしている。このようなカルボニルカロテノイドに対し、本研究では2光子励起分光を用いることで、分子内電荷移動状態と最低励起一重項状態を選択的に生成し、選択励起された状態の超高速ダイナミクスを明らかにすることに成功した。この結果は、カルボニルカロテノイドにおける、分子内電荷移動ダイナミクスという光物理過程において新たな解釈を与えた。さらに珪藻類のエネルギー伝達機能において、本研究により確立された2光子選択励起分光法を用いて、励起エネルギー移動過程の人為的制御が可能であることを示した。
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Research Products
(37 results)