2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J02939
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
水田 隆太郎 Kyoto University, 大学院・農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 農家経済 / 家族経済 / 農業発展 / 児童労働 / ゆい |
Research Abstract |
本年度は,前年度に立てた研究計画に従って,(1)両大戦間期日本の農家経済調査データ・ベースを作成し,(2)それを用いて農家の労働配分パターンに関するミクロ経済学的な研究に従事した.(1)データ・ベース化の対象とした資料は,(1)日本労働科学研究所が1938(昭和13)年に実施した児童労働調査の個票データと(2)積雪地方農村経済調査所が1942(昭和17)年に実施したゆい慣行調査の個票データである.((2)の収集・撮影に当たっては,資料を所蔵する雪の里情報館(山形県新庄市)から全面的な協力を受けた.)この二つの資料のデータ・ベースは,農家の経済行動をミクロ経済学的な観点から分析する際に重要な意義を担うものである.(2)本年度はこの二つのデータ・ベースを利用して,農業発展と農家の労働配分パターンとの間の相互関係を詳細に検討した.まず,(1)のデータ・ベースの定量的な検討を通じて,農家の児童の労働配分を決定する主要な要因が,農業の強度と熟練度という技術に関わる要因であったということが明らかになった.この事実は,日本の農村では農業発展に伴う技術変化が農家児童の労働参加を抑制する方向に作用した可能性があることを示唆している.また,(2)のデータ・ベースを用いた定量的な分析からは,ゆいと呼ばれる農村独特の労働慣行が,日本の小農組織の維持にとって不可欠な機能を担っていたという事実が指摘された.この観察結果の含意は,日本の小農組織の存続とそれが担う農業発展が,ゆいと呼ばれる独自の労働調整のシステムによって支えられていた,ということである.本年度の研究は,日本農家の労働配分パターンを,技術と制度という新たな観点から検討し,興味深い発見事実を得たというところに大きな特徴を持っている.
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Research Products
(3 results)