2009 Fiscal Year Annual Research Report
家族/非家族境界と生―政治-新しい「生の基盤」を巡って
Project/Area Number |
08J02959
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
久保田 裕之 Osaka University, 人間科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 家族 / 生-政治 / 共同居住 / 家計 / 世帯 / シェアハウジング / ベーシック・インカム / コモンズ |
Research Abstract |
最終年度にあたる平成21年度の研究成果は、以下の通りである。 本研究の第一の目的は、生活の物理的基盤としての居住を中心として、家族ではない他人との共同居住(非家族居住)の事例を検討していくという経験的なものであった。この点につき、日本でも若者を中心に実践されつつある「シェアハウジング」と呼ばれる非家族居住についてのフィールドワークを行い、単著『他人と暮らす若者たち』として刊行した。また、とりわけ家計経済学とコモンズ論の観点から非家族居住を考察した。このような非家族との居住実践のデータを元に、現在の家族社会学における「家族の多様化」論を批判的に検討したものが「『家族の多様化』論再考-家族概念の分節化を通じて」である。その結果、家族概念を単に押し広げるだけでは、近代家族以外の多様な生活形態を分析から除外してしまい、結局は従来の家族さえも十分に考察できないことを明らかにした。 本研究の第二の目的は、「生-政治」の戦略拠点としての近代家族とは異なる、新たな「生の基盤」の可能性を検討するという理論的なものであった。この点につき、個人単位で無条件一律に現金給付を行うというベーシック・インカムの議論を手がかりに、政策単位は家族か/個人かという従来の議論を批判的に検討した。その結果、最低限の生活水準を確定するためには、従来はもっぱら家族が担ってきたケアのコストと、生活の共同による規模の経済を考慮する必要があり、これらの検討なしに個人単位の福祉を議論できないことを明らかにした。 以上のような議論は、雇用によっても家族によっても生活を支えることが困難になったと考えられる現代において重要な意義を持っている。また、定額給付金や子ども手当てをはじめとする個人単位給付が導入されつつある現在、その効果と是非をめぐる議論に重要な示唆を与えることになる。
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Research Products
(6 results)