2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代イラン政治の動態的把握――社会と宗教の相互依存と拮抗関係
Project/Area Number |
08J02960
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
黒田 賢治 京都大学, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | イラン政治 / イスラーム / シーア派 / 宗教政治 / 宗教復興 |
Research Abstract |
本年度においては、平成20年度、平成21年度の研究活動を通じて収集したペルシア語およびアラビア語文献資料の読解をより深化させた分析を行うとともに、臨地研究によって得られたフィールド・データを統合した分析を行った。加えて、これまでの成果を積極的に発信するとともに、宗教法学権威の組織構造、宗教法学権威の法解釈と社会動態を含めた博士論文を完成させ、学位の申請を行った。 本研究計画の集大成である博士論文においては、特に以下の3つの重要な点を明らかにすることができた。第一点に、革命以降、特に近年のアリー・ハーメネイー指導体制下においては、草の根レベルでの法学界と社会の親密性が持続するなかで、法学界内の法学知に基づく知的権力構造を背景に法学界では、中央政治で言うところの「保守派」に相当する右派の法学者、「改革派」に相当する左派の法学者が再生産され、社会内の政治勢力とも密接に関係してきたということが明らかとなった。と同時に、第二に、国家は法学界を漸次支配構造に組み込もうと試みてきた結果、権威主義体制研究が政治機構内での一定の党派対立を可能とさせつつ、国家に有利な制度を形成してきたのと同様に、法学界内でも一定の法学者同士の競合が可能である一方で、国家側の法学者に有利な状況を制度的に形成してきたことが明らかとなった。しかしながら、第三に、左派の法学者の再生産を可能としてきた法学知に基づく知的権力構造が国家の法学界また社会を支配の上で不都合である一方で、国家にとって社会の諸側面の「イスラーム」化を図る上で法学知のが不可欠であことから保持され続けるという構造をもつことが明らかとなった。 こうした博士論文によって明らかとなった点については、研究計画において提起した、宗教法学者の法解釈行為、および宗教法学権威の組織構造の分析の成果であるといえる。
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Research Products
(3 results)