2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03014
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
江崎 公児 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 刹那滅 / ニヤーヤ学派 / ウッディヨータカラ / 『ニヤーヤ・ヴァールティカ』 / ダルマキールティ / 所作性に拠る刹那滅論証 |
Research Abstract |
仏教の基本的教義の一つである「諸行無常」を理論的に発展させた「およそ存在するものは刹那(瞬間)毎に生じては滅する」という刹那滅論が登場して以来、古代インド思想界において仏教とバラモン教学派との間で激しい論争が繰り広げられた。とりわけ、論理学を専門とするニヤーヤ学派は、仏教による刹那滅論証に対し徹底的な批判を加え、刹那滅論を巡る論争を通じて両派とも学説を発展させていった。本研究は、ニヤーヤ学派の側からの刹那滅論に関する論争史を解明することを目的としている。 昨年度から引き続き、ウッディヨータカラの『ニヤーヤ・ヴァールティカ』(NV)3.2.10--17の文献学的研究を中心として研究を進めた。『ニヤーヤ・ヴァールティカ』は、仏教側の思想家ダルマキールティ以前のニヤーヤ学派による刹那滅論批判の貴重な資料として位置づけられる。 ウッディヨータカラは、事物の変化の観察に基づく「変化に拠る刹那滅論証」を主に批判し、その過程で、後代に至るまで用いられる、作られた事物は瞬間毎に必ず滅する性質を持つということに基づく「所作性に拠る刹那滅論証」も批判の対象として取り上げている。このようなウッディヨータカラの批判がどのように彼以降の仏教徒によって再批判されていったのか、という点についても研究を行った。 また、『ヴァールティカ』に対する注釈文献『タートパリヤ・ティーカー』についても、対応箇所の文献学的研究を進め、ニヤーヤ学派における反刹那滅論史の詳細を明らかにすることに努めた。
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