2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03087
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平野 篤 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンパク質 / 凝集 / リポソーム |
Research Abstract |
タンパク質の凝集は疾患因子として知られており、包括的な理解及び制御が求められている。生体内には多くの生体高分子や低分子化合物が存在しており、その複雑さゆえにタンパク質の凝集機構は現在のところ完全には解明されていない。これまでに希薄な溶液環境におけるタンパク質の凝集機構が調べられてきているが、実際の生体内は高分子や細胞膜などによって混み合っており、生体内でのタンパク質凝集を理解するためには、これらの物質の作用機序を無視できない。そこで本研究ではポリマーと脂質二重膜を利用した生体模倣系を構築してタンパク質の凝集を観察することで、生体内でのタンパク質凝集を溶液および膜の物理化学的性質の立場から理解することを目指している。本年度は研究計画に従って、生体内の混み合った環境がタンパク質凝集過程に与える影響を調べるとともに、タンパク質凝集体と脂質二重膜の相互作用を調べた。その結果、PEGなどの高分子によって混み合った溶液環境ではタンパク質の凝集成長速度が低下することがわかった。本結果は、生体内での非特異的なタンパク質凝集抑制機構を示唆するものである。また、本実験を通して、タンパク質の凝集体構造の一形態であるアミロイド線維が、脂質二重膜との相互作用という点で、タンパク質/カーボンナノチューブ複合体と似た物性を示すことを発見した。アミロイド線維は脂質二重膜に対してタンパク質/カーボンナノチューブ複合体と同様な剛直性を示すため、アミロイド線維のこのような機械的特性が脂質二重膜との相互作用に支配的であることが示唆された。今後、顕微鏡観察などを通して、タンパク質由来のナノ粒子がもつ生体毒性に関する共通した見方を提案できると期待される。
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