2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03087
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
平野 篤 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | タンパク質 / 凝集 / リポソーム |
Research Abstract |
タンパク質の凝集は疾患因子として知られており、タンパク質の凝集を理解・制御することが医療および蛋白質科学の分野で期待されている。細胞内ではさまざまなタンパク質や生体低分子化合物が存在しており、現在のところ凝集プロセスの主因となる物理化学的な性質は明確ではない。細胞内での凝集を支配する因子を抽出するための最もシンプルな系が、生体内に近い実験系を構築したin vitro観察である。本研究ではポリマーや脂質二重膜を利用した生体模倣系を構築し、タンパク質の凝集を誘導させることで、生体内でのタンパク質凝集と物理化学的性質の因果関係を解明することを目指した。本年度はポリマーを用いて生体内の混み合った溶液環境を模倣し、タンパク質凝集に与える影響を調べた。その結果、分子量1,000程度のPEGにはリゾチームの熱凝集を抑制する働きがあり、分子量35,000以上では熱凝集抑制効果が低下することがわかった。分子量1,000程度のPEGは、その両親媒性によって、多点的にリゾチームと相互作用し、タンパク質分子間相互作用を抑制すると考えられた。分子量が増加するにつれてPEGの凝集抑制効果が低下したことは、タンパク質の凝集が排除体積効果の影響を受けることを示唆している。さらにアミノ酸などの低分子化合物を添加することで、凝集抑制能が飛躍的に向上することがわかった。低分子化合物の効果を詳細に調べた結果、低分子化合物の荷電状態とタンパク質への結合能が凝集抑制に支配的であることが分かった。このように生体内ではポリマーと低分子化合物が補完的にタンパク質の凝集を抑制することが示唆された。本研究で得られた物理化学的な機構に基づいた溶液特性を応用することが疾患原因のタンパク質凝集を抑制する新しいアプローチにつながると考えられた。
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Research Products
(3 results)