2008 Fiscal Year Annual Research Report
網膜構造をふまえた視覚的3次元構造の復元過程と情報選択性
Project/Area Number |
08J03102
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
白間 綾 Ochanomizu University, 大学院・人間文化研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | 視覚探索 / 偏心度効果 / 視覚的注意 / アモーダル補完 |
Research Abstract |
われわれの視野は、眼球の網膜上の視細胞の分布特性や、複数の視覚野における視野の投射特性等により、空間的に不均一な構造をもつ。本研究では、視野の空間的不均一性が視覚課題に及ぼす影響を視覚探索課題により検討した。 研究1 不均一視野と注意制御過程視覚探索課題において、目標刺激の提示される偏心度の増加に伴い視覚探索効率は低下する現象を偏心度効果とよぶ。本研究では数種類の刺激サイズの調整方法から、高偏心度刺激の視認性、視野の空間的不均一性、ターゲットの弁別性、の3要因が偏心度効果に及ぼす影響を検討した。その結果、ターゲットの弁別性に関わりなく高偏心度の視認性の低下は偏心度効果を引き起こすことが示唆された。ところが、高偏心度刺激の視認性は高いが、視野の空間的不均一性が維持される条件では、偏心度依存性の注意バイアスの存在が示唆された。加えてこの注意バイアスはターゲット弁別性が低いときにのみ見られ、弁別性が高い場合にみられる効率的な探索を阻害しない性質があった。 研究2 アモーダル補完が視覚探索に及ぼす影響は網膜偏心度に独立か感覚入力がないにも関わらず、遮蔽部分が補完されて知覚される現象をアモーダル補完とよぶ。Rensink&Enns(1998)は視覚探索課題を用いてアモーダル補完が視覚過程の比較的初期、かつ視野横断的に成立すると主張した。研究2では,Rensink&Enns(1998)と同様の課題を用い、アモーダル補完の生じる目標刺激が提示される網膜偏心度の効果を調べた。その結果、アモーダル補完が視覚探索に及ぼす影響は、偏心度の増加と共に変化した。高速なアモーダル補完過程を成立させる基盤は、ある程度広域な視野領域に存在するが,補完を経て形成される視覚表現は偏心度に依存して一様でないようだ。 以上の研究から、視野の構造的特性が視覚的注意の制御過程と視覚表象の形成過程に複雑な影響を及ぼすことが明らかになった。
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Research Products
(5 results)