2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03132
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
大島 幸代 Waseda University, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 毘沙門天 / 金光明経 / 変相図 / 唐代 / 甘粛 / 四川 / 石窟壁画 |
Research Abstract |
唐代後半期から五代期にかけて毘沙門天信仰とそれに伴う造形活動は盛行の一途を辿り、西安周辺地域・甘粛地域・四川地域などに膨大な数の絵画・石窟壁画・摩崖彫刻といった美術作品が残る。本研究の目的は、その造形活動の推移・展開の歴史を体系的に捉えることにある。今年度は2本の柱、すなわち(1)甘粛地域の造形作品の現地調査とデータベースの作成、(2)文献史料・石刻史料による毘沙門天の造形活動記録の検証、これらを軸に研究基盤の構築に専念し、甘粛地域と四川地域の毘沙門天造形活動について比較研究を進めた。まず(1)では、事前に当該地域の毘沙門天関連作品のデータベースを仮作成し、作品タイプ別に分類を行った。その上で敦煌研究院の助力を得て、敦煌市莫高窟、瓜州市楡林窟の壁画・塑像の現地調査を行った。特に本研究において肝要となる『金光明経』を絵画化した変相図、単独毘沙門天像、毘沙門天像と天女像が並立する図像など、当該地域の毘沙門天信仰の成立の問題に絡む作例を中心に精査した。また(2)では、作品の現存しない地域も含め毘沙門天の造形活動が記録される史料を収集・釈読し、現存作品との比較照合を行った。これら(1)(2)の基礎的な検証を通し、四川地域がその土地を舞台にした霊験説話や特異な図像を生み出しながら戦神としての毘沙門天信仰を独自に展開したのに対し、敦燈地域では中央アジアを舞台とした西域起源の説話や伝説をもとに長らく造形活動を行い、四川地域ほどの独自性・土着性を有さなかったことが明らかになった。従来の地域間の差異を問わない一元的な唐代毘沙門天信仰史に対し、大きな見直しを迫る問題提起となった。
|
Research Products
(2 results)