2008 Fiscal Year Annual Research Report
水素分子の安定同位体組成をトレーサーに用いた海底熱水系における微生物活動の定量化
Project/Area Number |
08J03151
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
今野 祐多 Hokkaido University, 大学院・理学院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 極限環境微生物 / 水素 / 安定同位体 |
Research Abstract |
海底熱水や陸上地下水などの地下微生物圏における微生物活動を定量するために水素安定同位体定量を行った.研究計画に記した,既に採取され保管されている海底熱水試料の水素分子の安定同位体組成の定量を行った結果,試料の保管方法によりその同位体組成に影響を及ぼす可能性があることが示唆された.所属研究室では既存の手法として,採取された熱水中の気体成分のみを船上抽出し実験室へ持ち帰るのが一般的であるが,その際にステンレス容器かガラス容器を用いる.両者の違いは,前者はバルブもステンレス製であり保存性が良いとされ,後者はバルブがバイトンのo-ringもしくは磨りガラスであるため保存性能が劣ると考えられていた.しかし,水素分子の同位体組成を定量した結果,ステンレス容器に抽出した試料はδD=-700~-800‰と一様な値になった.これらの試料は多様な地質的背景を持つ海底熱水において採取した試料であるため,それぞれに固有の値を持つと予想していた(Proskurowski et al.,2006).一方,アーカイブ試料中で唯一ガラス容器に抽出した沖縄トラフにおける試料の水素同位体組成はδD=-300~-400‰となり,これまでに観測された似通った地質背景におけるものと近い値(Proskurowski et al.,2006:ガラス製容器に封入)となった.これらの結果から,水素がステンレスと容器内部表面で反応した可能性があると考えられる,これまでの熱水研究でステンレス容器が炭素同位体などに影響を与えるといった報告は無いことからも,水素とステンレスに特有の問題である可能性があり,今後の試料採取方法に注意する必要があると言える.保存性能が劣ると考えられていたガラス容器の方が水素同位体定量に関しては優れていることがわかった.ただし,ガラス容器に採取した試料における水素安定同位体の結果は,熱水温度を示す関数上によくフィットしていることから,微生物活動を示すものではないことが明らかになった.この結果はKonno et al.(2006)における気体成分が示すものと一致している.
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Research Products
(2 results)