2008 Fiscal Year Annual Research Report
新規ミトコンドリア膜透過装置Tam41の複合体解析
Project/Area Number |
08J03173
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
原田 佳宗 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員DC2
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Keywords | ミトコンドリア / 膜透過装置 |
Research Abstract |
本研究では、tam41温度感受性変異株を作製し、そのマルチコピーサプレッサー遺伝子STA65(Suppressor of TAm41 65)を単離し、その機能解析を通して、Tam41の機能に迫ろうと計画した。まず、Tam41の一次構造に注目し、菌類からヒトに至るまで保存されているアミノ酸残基約50箇所を、網羅的にアラニンに置換した変異体を作製し、tam41温度感受性株をスクリーニングした。次に、Tam41と遺伝学的に相互作用する遺伝子を同定するために、tam41温度感受性株の増殖阻害を相補するマルチコピーサプレッサー遺伝子STA65を同定した。 現在、Sta65の過剰発現により、tam41変異体のTIM23複合体の解離が抑制され、TIM23複合体経路のタンパク質輸送能が回復し、その結果、tam41変異体の増殖阻害が相補されることを明らかにした。また、tam41破壊株で、ミトコンドリア内膜の主要なリン脂質であるcardiolipin(CL)の量が減少するという報告がなされたため、tam41変異体の脂質組成を分析した。CLの合成は、glycerol-3-phosphate→phosphatidic acid(PA)→CDP-diacylglycerol→phosphatidilglycerolphosphate(PGP)→phosphatidilglycerol(PG)→CLと進行する。tam41変異体では、CLのレベルが低下すると共に、PGPが蓄積していた。このことから、Tam41はPGPからPGへの反応を触媒するphosphataseである可能性が考えられ、tam41変異体でTIM23複合体が解離する原因は内膜の脂質組成の異常のためと考えられる。一方、tam41変異体でSta65を過剰発現させると、CLのレベルは回復しないが、その前躯物質であるPAのレベルが上昇した。CLとPAは共に酸性リン脂質であるため、CLが減少しても、同じ静電的なチャージを持つPAが増加することで機能を代替し、tam41変異体のTIM23複合体の解離を抑制すると考えられる。さらに、Sta65の過剰発現はCL合成酵素であるcrd1破壊株の増殖阻害をも回復させた。 以上より、Sta65は脂質代謝の調節に関わる因子であると考えられる。今後、Sta65による脂質代謝の調節メカニズムを明らかにしたい。Sta65の発見は、細胞全体の脂質組成の恒常性維持というこれまで知られていなかった新しい分野に切り込むブレークスルーとなるものと考える。
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Research Products
(2 results)