2008 Fiscal Year Annual Research Report
世界的ツバキ名花'玉之浦'を通した複色花発生機構およびヤブツバキ遺伝的分化の解明
Project/Area Number |
08J03185
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
立石 信峰 Kyushu University, 農学研究院, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | ヤブツバキ'玉之浦' / 葉緑体DNA変異 / 准化過程 / レフュージア / 花色変異 / アントシアニン / 色素生合成酵素遺伝子 / 発現量解析 |
Research Abstract |
本年度はヤブツバキ(Camellia japonica)の葉緑体DNAタイプのさらに詳細な調査・分類と,ヤブツバキ花弁の色素生合成酵素遺伝子の単離および'玉之浦'花弁におけるそれら遺伝子の発現量解析を行った. 【葉緑体DNA変異】葉緑体DNA2領域のPCR-RFLP分析によりヤブツバキの葉緑体DNAを3種類(Haplotype Ia,Ib,III)に分類することができ,さらにヤブツバキの葉緑体DNA変異には地理的に大きな偏りがあることが明らかになった.日本本土の集団では,ほとんどあるいはすべての系統の葉緑体DNAがHaplotype Iaであったのに対し,長崎県壱岐,対馬ではHaplotype IaとHaplotype Ibが,長崎県五島列島では3種類すべてのハプロタイプ(Haplotype Ia,Ib,III)がみられた.これらの結果は,九州西部の地域が,我が国のツバキ属植物の進化過程において非常に重要な地域,例えば,最終氷期におけるレフュージアであった可能性を示唆していると考えられた. 【'玉之浦'花弁白覆輪形成機構解明】色素生合成酵素遺伝子のうち,CHS,F3H,DFR,ANSの計4遺伝子の一部をクローニングすることができた.これらの遺伝子配列はチャ(C.sinensis)などの木本性植物のそれと高い相同性を示した.また高等植物の遺伝子配列に基づいて設計したdegenerate primerを用いた色素生合成酵素遺伝子のRT-PCRの結果,白覆輪部位においてCHS遺伝子の発現量が著しく低下していることが明らかになった.以上のことから,'玉之浦'花弁の覆輸化は,花弁周縁における部位特異的なCHSの発現量低下によるアントシアニン蓄積の欠如によって引き起こされていると考えられた.
|
Research Products
(6 results)