2009 Fiscal Year Annual Research Report
敦煌莫高窟における中国伝統図像について-第249窟、第285窟天井壁画を中心に
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08J03235
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田林 啓 Kobe University, 人文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 中国伝統図像 / 敦煌莫高窟第249窟、第285窟 / 炳霊寺石窟野鶏溝壁画 / 畏獣像 / 中国の実地調査(特に地方都市博物館) |
Research Abstract |
平成21年度では、中国での長期間の現地調査、2度の学会での口頭発表、2本の論文発表を行った。まず中国での調査は、北京、河南省、陝西省、四川省、甘粛省などの博物館や石窟寺院を巡った。特に甘粛省では、敦煌莫高窟や張掖馬蹄寺石窟、文殊山石窟の他に平涼市博物館や霊台県博物館といった地方都市の博物館にも訪れ、陝西省でも同じく西安碑林博物館や陝西歴史博物館だけでなく、耀県碑林などを訪れ、こうした地域で莫高窟第249窟及び第285窟と同時代の未見の作品の資料収集を行った。こうした資料は、莫高窟第249窟、第285窟の制作過程を考える上で貴重なものである。口頭発表は2009年5月に国際東方学者会議にて、「炳霊寺石窟野鶏溝(192窟)北朝壁画について」と題して行い、莫高窟第285窟壁画の制作背景には西魏時代という時代的特色が反映されている可能性を指摘した。第285窟の壁画中に異様式の併存現象が現れる原因として、これまで制作年代差があるという説が有力視されてきたが、この発表により新たな可能性を指摘することができた。これと同内容の論文は、『佛教芸術』第308号(2010年1月)にて発表した。またもう一本の論文である「畏獣像小考-六世紀前半作例の性質と機能を中心に」(『神戸大学美術史論集』第10号、2010年2月)では、第249窟、第285窟の天井壁画の世界観を考察する上で最も重要な図像の一つである畏獣像の機能が、辟邪(魔よけ)と共に人々の徳を称える瑞獣としての役割もある可能性を指摘した。また2009年8月には、中国の蘭州大学で「試論敦煌莫高窟第249窟、第285窟窟頂壁画的制作過程」と題して口頭発表し、第285窟壁画の制作には南京由来の図像の影響が存在することを指摘。以上の成果によって、敦煌莫高窟における中国伝統図像研究の中心となる第249窟及び第285窟の制作背景及びそこに反映される世界観を考察していく中で、大きく一歩前進したと言える。
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Research Products
(4 results)