2008 Fiscal Year Annual Research Report
非平衡多粒子系の緩和過程を渦運動・乱流の両視点より構造解析する非中性プラズマ実験
Project/Area Number |
08J03246
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
河井 洋輔 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 非中性プラズマ / 高レイノルズ数乱流 / 渦動力学 / wavelet解析 |
Research Abstract |
本研究は、非中性電子プラズマを用い、不安定性より生じる渦群が集団相互作用を介し大局的な秩序構造を形成するまでの緩和過程について、実空間上において観測される渦運動と波数空間上において展開される乱流理論の両視点から統合的に理解することを目的としている。これまでに研究代表者は、高精度で観測された電子密度分布画像にFourier解析を適用することで、この緩和過程が、乱流理論モデルにっよて予測される高波数領域への密度の流れとして記述されることを確かめている。しかしながら、実空間上での情報が失われてしまうというFourier解析の性質が、実・波数両空間上での動力学を関係付ける上で大きな障害となっていた。そこで本年度は、両空間上で局所的な分解能を有するwavelet解析を画像データに適用することを試みた。それにより微細な乱流構造を直接観測できる本実験の特長を最大限に利用することが出来るようになり、以下のような結果を得ることが出来た。 1.波数スペクトルの実空間分布を密度分布のwavelet展開係数より導出することで、波数空間上で観測される密度の高波数領域への流れが、実空間上では渦の合体に伴う密度構造の微細化に対応していることを明瞭に示した。 2.実・波数両空間上に局在するwaveletの特性を利用し、密度分布より大局的なスケールを持つcoherentな渦構造と乱流渦とを分離することで、この大局的な流れが、理論モデルで想定される理想的な乱流に与える影響を定量的に評価した。 小さなスケールでの乱れが、大きなスケールでの秩序構造形成につながる物理機構は、非中性プラズマや乱流だけでなく様々な自然現象において普遍的に存在すると思われる。しかしながら、このような広いスケール長に渡る現象を、理想的な条件下で高精度に観測・解析できる実験は現実には得難く、本研究は分野横断的な学術的価値を有する。
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