2010 Fiscal Year Annual Research Report
カイコ内在性シャペロンの機能解析とその組み換えタンパク質発現系への応用
Project/Area Number |
08J03257
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山下 隼 九州大学, 大学院・農学研究院, 特別研究員(DC1)
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Keywords | Heat shock factor / heat shock factor like protein / 熱ショック応答 |
Research Abstract |
本年度は、Hspの転写活性因子BmHsf1と、他生物には無い、BmHsfllpについての機能を明らかとした。まず、培養細胞を用いて、これらを過剰発現すると、通常のBmHsp70のプロモーター活性がBmHsfl、BmHsfllpそれぞれで、コントロール区と比較して2.5、4倍上昇した。また、これらを過剰発現させた細胞に熱ショックを与え、活性値を経時的に観察した結果、その値に変化は見られなかった。他生物では、Hsflホモログは、通常、不活性化した状態で細胞質に局在しており、熱によって活性化すると共に、核移行し、Hsp geneの発現を促すことが報告されており、BmHsfl、BmHsfllpの性質は他生物と大きく異なる事が予測された。また、細胞内局在解析を行った結果、通常状態から核局在であることが明らかとなった。さらに、これらを恒常的に単独で過剰発現させる細胞を作製し、そのHsp geneの発現量を解析したところ、ほとんどHsp geneの発現量の増加は見られなかった。BmHsfl、BmHsfllpのDNA結合ドメインを用いて作製した活性型変異体を発現させても、恒常的にHsp geneの発現上昇は見られなかった。他生物では、熱ショックによるHsp geneの発現上昇は、Hsflの活性化とDNAの構造変化に制御されることが明らかとなっており、カイコでは特に後者の影響が強いのではないかと考えられた。 以上より、カイコではHsfファミリータンパク質が2つ保存されている点、また、熱によって大きく活性化しない点において、カイコ特異的な熱ショック応答の制御機構が存在すると考えられる。その原因の1つとして、エピジェネティクスなHsp geneの発現制御が考えられ、このことは今回研究に用いたHsp geneやHsfがカイコのクロマチン研究の1つのツールになり得る可能性を示唆した。
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Research Products
(1 results)