Research Abstract |
申請者の研究室で開発された走査プローブ顕微鏡の機能を複合した透過電子顕微鏡によるその場電子顕微鏡法を用いて,様々な金属材料種のナノメートルサイズの接点(金属ナノ接点)を作製し,その原子ダイナミックスと諸特性の対応関係を明らかにして,それらの一般則を導き出すことを目的として研究した.本年度は以下の2点について実験を行った. 1.まず,室温で引っ張り変形させた金,銀,銅,白金,パラジウム,およびゲルマニウムのナノ接点の構造変化と電気伝導・力学特性を解析した.その結果,各種金属ナノ接点の電流密度,伝導度などの電気伝導に関する定数と,接点の応力ひずみ曲線から,強度,弾性限界,ヤング率,およびせん断応力などの力学的定数を明らかにした.特に,パラジウムナノ接点の臨界せん断応力の値がもとまった.パラジウムナノ接点は,均一な太さの柱状構造であり,その後,接点中央部分で単一のすべりを生じ破断した.これは各種金属ナノ接点において,ナノ接点のすべり変形過程と力学特性の対応関係を初めて明らかにしたものである. 2.次に,その場電子顕微鏡に帰還回路を組み入れた手法を用いて,一定のコンダクタンスに対応する接点の構造を電子顕微鏡で観察した.その結果,金ナノ接点では,一定のコンダクタンスに対して複数のナノ接点構造が現れることがわかった.これまで,金属ナノ接点のコンダクタンスは,その最小断面積によって決められると考えられていたが,本研究によって,ナノ接点のコンダクタンスは接点の最小断面積だけでは決められず,接点の長さ,開き角,および接点の両端につながる電極形状の複数のパラメータを考慮しなければならないということが明らかになった.また,本研究によって接点が安定化するときに作用するナノニュートンレベルの力が示された. 以上,申請時の研究計画に記載された当年の目的は達成され,今後の研究課題が新たに見出された.
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