2009 Fiscal Year Annual Research Report
その場電子顕微鏡法による金属ナノメートル接点の構造と物性の研究
Project/Area Number |
08J03271
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
松田 知子 University of Tsukuba, 大学院・数理物質科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | その場電子顕微鏡 / 原子直視観察 / ナノメートル接点 / バリスティック伝導 / コンダクタンスの量子化 / すべり変形過程 / 電流-電圧特性 / エレクトロマイグレーション |
Research Abstract |
本研究では,申請者の研究室で開発された走査プローブ顕微鏡の機能を複合した透過電子顕微鏡によるその場電子顕微鏡法を用いて,金とパラジウムそれぞれのナノメートルサイズの接点(ナノ接点)を作製し,その原子ダイナミクスと諸特性の対応関係を明らかにすることを目的としている.本年度は以下の2点について実験した. 1.室温・高真空中で引っ張り変形させた金ナノ接点に交流電圧を印加し,そのときの構造変化と電流-電圧特性を解析した.その結果,金ナノ接点の電流-電圧特性には非線形性が現れることがわかった.この非線形性は,ナノ接点の最小断面積に依存して変化することが見出された.これまで用いられてきたコンダクタンス測定だけの実験手法では,金属ナノ接点の電気伝導に寄与する構造変化は不明であり,計算による予測にとどまっていたが,本研究により,金属ナノ接点の電気伝導特性の変化に対応する原子レベルの構造ダイナミクスが直接明らかになった. 2.室温における金ナノ接点のコンダクタンスの量子化の崩壊について調べるため,接点に印加する電圧を徐々に増加させてエレクトロマイグレーションが発生する過程を観察した.このとき,同時にコンダクタンスと接点に作用する力を測定した.その結果,金ナノ接点のエレクトロマイグレーションは従来報告されている臨界電圧よりも低い値で生じることがわかった.また,エレクトロマイグレーション発生中に,原子がナノ接点に集積し圧縮応力が作用することによるすべり変形が観察された.本研究により,バリスティック伝導性を失いコンダクタンスの量子化が崩壊したときの金ナノ接点の構造ダイナミクスと電気伝導・機械的特性の対応関係が直接明らかになった. 以上,申請時の研究計画に記載された当該年度の目的は達成された.初年度の報告と併せて,当初の計画時よりも期待以上の成果が得られ,これらは金属ナノ接点の一般則を導くきっかけとなるものである.
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Research Products
(5 results)