Research Abstract |
圃場における窒素の収支および動態を解明する為に,イネ葉からのNH_3放出に着目し,なぜNH_3が放出されるのか,またそこに品種間差ぶあるのかについて検討した.まず,1)NH_3放出速度の測定法を確立し,その方法を利用し,2)NH_4^+供給量がNH_3放出速度に及ぼす影響,3)NH_3放出速度の日変化を調査し,以下の結果を得た. 1)NH_3を吸着するリン酸含浸濾紙を固定したホルダー内に,外気を通過させて,通気空気中のNH_3を完全に除去した後に,イネ個葉を封入した同化箱に導入した.さらに濾紙を固定したホルダーに通過させ,葉から放出さ筋るNH_3,を捕集した.捕集量,測定時間と葉面積を基に,NH_3放出速度を算出した.本法のNH_3捕集精度は98%と非常に高かった. 2)標準NH_4^+区および低NH_4^+区で栽培したイネ2品種(アケノホシ,カサラス)を対象に,1日の平均NH_3放出速度,正午の葉組織NH_4^+濃度,葉のNH_3同化酵素であるグルタミン合成酵素(GS)活性を調査した.NH_3放出速度は2品種ともに,NH_4^+供給量の低下に伴い低下した.また,両区において,葉内窒素含量の高いアケノホシのNH_3放出速度が低く,NH_3放出は体内の窒素濃度調整機構として働いていると考えられた.葉組織NH_4^+濃度およびGS活性もまた2品種ともに,NH_4^+供給量の低下に伴い低下した.葉内NH_4^+濃度は,両区ともにアケノホシで低く,その傾向はNH_3放出速度のそれと類似していた.一方,GS活性は両区ともにアケノホシで高かった.以上の結果より,イネ葉からのNH_3放出における品種間差には,葉内NH_4^+蓄積およびNH_3同化能力の差異が関与していることが示唆された. 3)アケノホシとカサラスのNH_3放出速度を4時間間隔で24時間調査したところ,NH_3放出速度は両品種ともに,6時以降増加し始めて12時から16時の4時間に最大値を迎えた後,20時にかけて夜間の低いレベルまで減少した.葉からのNH_3放出は,光強度や気温への依存性が高く,蒸散作用に強く依存しているものと考えられた.
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