2008 Fiscal Year Annual Research Report
空間構造を取り入れた光学応答の時間領域での展開:近接場光の探索と局所励起問題
Project/Area Number |
08J03281
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
岩佐 豪 The Graduate University for Advanced Studies, 物理科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ナノ構造体 / 近接場光 / 密度汎関数理論 / 実時間発展 / 非線形光学応答 / 高次高調波 / 多重極ハミルトニアン / 非一様励起 |
Research Abstract |
ナノ加工技術の進展により、ナノ物質近傍に局在する近接場光による分子の電子励起が可能となってきた。伝搬光に比べて遙かに細かい空間構造を持つ近接場光励起による分子の応答を調べる際には、従来の双極子近似を使った光学応答理論では不十分である。本年度の研究において、空間構造を持った電場に対する光学応答理論を、多重極ハミルトニアンに基づいて定式化し、直線分子NC_6Nへの適用を行い、その非一様な電子励起の機構解明を行った。 二分子系の多重極ハミルトニアンから出発し、一方の分子を電磁場放射源とする定式化を行った。光-分子相互作用項に近似なしの分極演算子を代入した後に、期待値を計算し、電場の空間構造の効果を取り込んだ有効ポテンシャルを得た。近接場光は双極子放射によりモデル化した。双極子放射場は放射源からの距離の-3乗に比例する強度勾配を持ち、電場の方向も非一様である。この非一様な近接場光誘起による電子ダイナミクスを、時間依存密度汎関数理論に基づく実空間電子ダイナミクス法により時間領域において数値的に解いた。 近接場光励起の結果として、一様電場による励起(双極子近似)に比べて、高次高調波が偶奇共に容易に発生することが明らかになった。摂動論と系の対称性に基づく考察を行い、高調波の次数と分子の対称性との関係を明らかにした。一方で、近接場光による電子励起では分子の対称性を反映しない電子励起が起こりうるため、分子の固有電子状態による解析が必ずしも適していないことが分かってきた。現在、近接場光励起問題を理解するための理論を検討中である。
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Research Products
(3 results)