2009 Fiscal Year Annual Research Report
空間構造を取り入れた光学応答の時間領域での展開:近接場光の探索と局所励起問題
Project/Area Number |
08J03281
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
岩佐 豪 Institute for Molecular Science, 理論・計算分子科学研究領域, 特別研究員(PD)
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Keywords | ナノ構造体 / 近接場光 / 密度汎関数理論 / 実時間発展 / 非線形光学応答 / 局所分光 / 多重極ハミルトニアン / 光マニュピレーション |
Research Abstract |
局在性を持つ近接場光と物質の相互作用から多種多様な物理現象が期待されている。20年度に開発を終えた電場の空間構造の効果を取り込んだ定式化と時間依存の密度汎関数理論を組み合わせた手法を、実在分子やナノ構造系へと適用し、近接場光の局在性を利用した局所分光と、近接場光の急峻な強度勾配を利用した力学操作の可能性を研究した。まず異方性を持つ1nmサイズの板状の金属ナノ構造体をジェリウムモデルで、近接場光は双極子放射で近似した系での近接場光励起問題を調べた。高調波スペクトルが、ナノ構造体と近接場光の光源の相対位置や相対角度に強く依存することから、局所分光へと展開できることを明らかにした。局所分光の一例として、少数Naクラスターの近接場光励起に対する吸収スペクトル(線形光学応答)と高調波スペクトル(非線形光学応答)を、近接場光光源位置の関数として求めた。Na_2の分子軸方向に偏光した近接場光による局所吸収スペクトルにおいて、分子中心、あるいは各原子上にピークを持つ2つの吸収成分を示すことを明らかにし、特に各原子上での吸収成分は近接場光の強度勾配の作用によるものと帰属した。また直線状とリング状のNa_6での近接場光誘起の高調波強度が、分子の形状を反映した実空間分布を示すことを明らかにし、高調波の次数によって分解能が大きく変わることを明らかにした。 最後に、近接場光から受ける力をジェリウムモデルによる直径1nmの金属粒子とC_<60>分子に置いて時間領域、エネルギー領域の両面から調べた。力のエネルギー依存性の図において振動構造を持つ事がわかり、これは近接場光励起により発生する不均一な分極を、誘起電荷とそれを遮蔽する成分に分けて考えることで説明した。また、双極子あるいは四極子励起には見られないより高次の多重極子の効果を含んだ近接場光励起特有の励起状態が力を大きく弱めることを明らかにした。
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Research Products
(10 results)