2008 Fiscal Year Annual Research Report
ラット大脳皮質ニューロンのサブタイプ構成とその間の結合特異性解析
Project/Area Number |
08J03289
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Research Institution | The Graduate University for Advanced Studies |
Principal Investigator |
平井 康治 The Graduate University for Advanced Studies, 生命科学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | ラット / 錐体細胞 / 前頭皮質 / 海馬 |
Research Abstract |
陳述記憶の形成に重要である、皮質-海馬結合の局所回路レベルでの解析を行った。 ラット前頭皮質において、皮質入力を海馬へ中継する嗅周囲皮質へ投射している錐体細胞を逆行性の蛍光トレーサーの注入により同定した。同時に、異なる蛍光トレーサーを扁桃体、対側線条体、視床、橋核のうち1つに注入し、蛍光標識の重なりを調べて、皮質外の軸策投射パターンについても調べた。その結果、嗅周囲皮質への投射細胞には、扁桃体へも投射する2/3層上部の錐体細胞(2/3層FPr細胞)と、両側線条体に投射する5層錐体細胞サブグループの一部(5層FPr細胞)の2種類があることがわかった。イオン泳動法による蛍光トレーサーの微量注入を行って、それぞれの細胞の軸策投射先の違いを詳細に調べたところ、2/3層FPr細胞は嗅周囲皮質35野の吻側部へ主に投射し,5層FPr細胞は嗅周囲皮質36野の吻側部に主に投射していることがわかった。以上の結果から、前頭皮質から嗅周囲皮質には、2つの異なる層から起こり、嗅周囲皮質の異なる小領域に投射される、2つの経路が存在することがわかった。この2つのFPr細胞、及びこれらとは別のサブタイプである5層の皮質視床投射(CTh)細胞が、皮質内でどの様に結合しているかを調べるために、それぞれ逆行性標識された細胞からのパッチクランプ記録を行って調べたところ、2/3層FPr細胞は5層FPr細胞とCTh細胞に等しい確率でシナプス結合しているのに対し、2/3層FPr細胞への結合は、5層FPr細胞からのみ作られることがわかった。この結果は、前頭皮質から嗅周囲皮質へ投射を行う2つのFPr細胞サブタイプが、皮質局所回路内で選択的に双方向に情報のやり取りをしている可能性を示唆している。 以上の成果は、前頭皮質内における情報処理が、海馬へと送られて記憶される為の神経回路のメカニズムの理解に有用な知見を与えるものと考える。
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Research Products
(1 results)