2009 Fiscal Year Annual Research Report
ラット大脳皮質ニューロンのサブタイプ構成とその間の結合特異性解析
Project/Area Number |
08J03289
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
平井 康治 National Institute for Physiological Sciences, 大脳皮質機能研究系, 特別研究員(PD)
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Keywords | ラット / 錐体細胞 / 前頭皮質 / 海馬 |
Research Abstract |
陳述記憶の形成に重要な皮質一海馬連携をニューロンレベルで理解する為、海馬へ皮質入力を中継する嗅周囲皮質に投射しているラット前頭皮質錐体細胞を同定し、その投射サブタイプの機能的性質及び皮質外投射・皮質内結合のルールを調べた。 20年度、逆行性蛍光トレーサーを用いて、嗅周囲皮質35野に投射する前頭皮質2/3層錐体細胞(FPr2/3)と嗅周囲皮質36野に投射する5層錐体細胞(FPr5)、及びこれらとは重複しない5層の皮質視床投射細胞(CTh)という異なる錐体細胞サブタイプを同定した。蛍光標識された細胞からのスライスパッチクランプ記録により、これらの投射サブタイプが異なる電気的性質を持ち、前頭皮質内での局所結合も投射サブタイプ間でルール化されていることを示した。21年度は、パッチ記録した各投射サブタイプの樹状突起をニューロルシダを用いてPC上で再構築し、定量解析した。結果、FPr2/3、FPr5、CThの尖端樹状突起と基底樹状突起の発達はそれぞれ異なっており、形態的特徴も投射サブタイプごとに異なっていることがわかった。特定のシナプス入力は樹状突起の決まったコンパートメントに作られるという最近の考えから、これらの投射サブタイプの形態の違いは受け取る情報の構成の違いを反映している可能性が考えられた。ここまでの研究は主に二次運動野で行ったが、前頭皮質領野間でFPr細胞の層分布に違いがあるかを調べる為、矢状切片上で蛍光標識されたFPr細胞を定量した。すると、背側にある一次・二次運動野、体性感覚野(吻側部)と、腹側の眼窩前頭皮質では層分布が大きく異なっていた。このことから、背側と腹側の皮質からの入力は、嗅周囲皮質での情報伝達の経路が異なっている可能性が示唆された。 一連の成果は、記憶形成の為に前頭皮質から嗅周囲皮質に送られる情報の前頭皮質内での処理と、伝達経路の理解に大きく寄与するものと考える。
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Research Products
(1 results)