2008 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長下における伝統的社会集団の再編と存続-中国四川省のボン教寺院を事例に
Project/Area Number |
08J03306
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 賢吾 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | チベット / ボン教 / 寺院 / 僧侶集団 / 僧侶教育 / 伝統的価値の存続 / 中国 / 四川省 |
Research Abstract |
本研究は、中国のチベット族集落におけるボン教寺院に注目し、寺院の僧侶集団とその実践が、経済成長をはじめとする社会変容の中で存続する要因を解明してきた。平成20年度においては、当該分野に関する先行研究文献の収集およびフィールドワークによる一次資料の収集と分析を実施した。 一次資料の収集に際しては、先行研究で触れられることの少なかった僧侶集団内部の微細なやりとりや、集団を支える背景に注目し、(1)寺院の存続の歴史的背景、(2)僧侶集団の成員と運営の分析、(3)僧侶集団の実践にみる伝統的価値の存続の3点を調査項目とした。(1)では文化大革命後の寺院の復興過程を再構成し、その中で建設作業や政府との交渉を主導してきた管理僧だもの重要性が明らかになった。そして(2)では僧侶集団が様々な出身地や背景を持つ多様な僧侶だちから成り立っていることを明らかにし、集団を維持するための規律の枠組みが先述した管理僧によって維持されていることを示した。また(3)では、僧侶教育の場において伝統的知識の核としての教師の確保と育成が盛んに行われる現状や、宗教舞踊などの身体技法の継承過程について明らかにした。 これらの知見は、当該地域とボン教に関する先駆的な研究成果であり、また伝統的社会集団の存続というより一般的な課題の解明にも貢献するものである。成果の一部は国内外の学会において口頭発表を行うとともに、日本語と英語の論文にまとめ、いずれも出版が決定している。
|
Research Products
(5 results)