2009 Fiscal Year Annual Research Report
経済成長下における伝統的社会集団の再編と存続-中国四川省のボン教寺院を事例に
Project/Area Number |
08J03306
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小西 賢吾 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | チベット / ボン教 / 寺院 / 僧侶集団 / 伝統的価値の存続 / 中国 / 四川省 / 宗教 |
Research Abstract |
平成21年度の研究活動においては、現代におけるボン教寺院の活動の存続に関する資料の収集と分析を、以下のとおり実施した。前年度の研究で明らかになった寺院内部での「伝統」の復興と存続のメカニズムを踏まえ、寺院が外部社会との関わりの中でその活動を存続させる動態を明らかにした。 前年度に続き、四川省アバチャン族チベット族自治州松潘県のボン教寺院においてフィールドワークによる一次資料の収集を行った。調査項目は(1)寺院同士のネットワークの成り立ち、(2)寺院と世俗社会の関わりの諸相である。(1)では、20世紀中盤以降のS寺の歴史を再構成し、そこから他の寺院や国外在住の高僧たちとの関係を析出することで、宗教復興を支えてきた寺院同士のネットワークの動態を解明した。(2)では、S寺の活動が世俗社会とのいかなる関係によって維持されているのかを分析した。その結果、近年の現金収入の増大によって、大規模な宗教活動が実施可能になったこと、そして経済成長下で宗教活動はむしろ活性化しており、それは宗教活動のさらなる発展を企図する僧侶達と、宗教に様々な願望を投影する人々の思いが交差する中で成立していることが明らかになった。 これらの知見を踏まえ、四川省成都市の西南民族大学において、調査地に関する歴史文献と、現地の社会変容に関する統計資料の分析を行った。また高僧の伝記や未出版の文献を、現地研究者の協力を得て分析した。それによって、寺院ネットワークの歴史的展開と、観光業を中心とする現地の経済発展の過程を明らかにし、一次資料の補強を行った。 以上の調査研究のまとめから、ボン教寺院と僧侶集団は、1980年代以降復興・強化されてきた様々な社会関係に支えられながら、人々の多様な願望の受け皿となる場として確立されたことで、その価値を維持し活動を存続させているという結論を導き出した。
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Research Products
(1 results)