2009 Fiscal Year Annual Research Report
真性粘菌変形体が作る適応ネットワーク系についての数理解析
Project/Area Number |
08J03310
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
宮路 智行 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 真性粘菌変形体 / 経路探索 / 常微分方程式 / ヘテロクリニック軌道 |
Research Abstract |
真性粘菌変形体が作る適応ネットワーク系についての解析が本研究の目的である。前年度までに、モデル方程式の解析を行い、その力学系的な振舞について数理的な理解を得た。数値シミュレーションによって得られた結果を数学的に厳密に証明することが研究目標であったが、これは必ずしも自明な仕事ではなく、現象及びモデルについてのより深い洞察が肝要であると判断した。そこで、Physarum Solverよりも粘菌に近いモデルとして、手老・小林・中垣による、粘菌の振動と体内の原形質流動に関するモデル方程式の解析を行った。これは、三つの未知関数を伴う反応拡散系である。これは、局所振動子が空間的に弱い拡散で結合するとともに、管内の原形質流動を表す強い拡散を伴う補助的な変数を持ち、ある種の質量保存則が成り立っている系である。この系に対して、空間一様な定常解の安定性解析を行った。三変数の系であるため、線形化固有値問題は三次方程式の根の複素数平面における配置の問題に帰着する。しかし、三次であるため、根の公式は広く知られているが、方程式のパラメータに対する依存性を理解できる形で明示することが困難である。そのために、線形化行列にGershgorinの定理を適用することによって、定常解が不安定化するための充分条件を現象と対照しやすい形で与え、一般に非自明な固有関数を持つモードのHopf分岐が生じることを証明した。このような分岐により、粘菌のリズミカルな振動運動を説明することができる。粘菌から細胞のインテリジェンスを学ぶ本研究の重要な一歩である。本研究結果は、現在投稿準備中である。
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Research Products
(2 results)