2008 Fiscal Year Annual Research Report
第3世代多機能型チオウレア触媒の開発と不斉触媒反応への応用
Project/Area Number |
08J03316
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
猪熊 翼 Kyoto University, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 有機分子触媒 / 不斉反応 / 天然物合成 / 水素結合 / 有機ホウ酸求核剤 |
Research Abstract |
1、海洋天然物ナカドマリンAの全合成 アミノチオウレア触媒を用いたα,β-不飽和イミドへのマロノニトリルの不斉マイケル反応をナカドマリンA合成において必要な3-フリル基を持った基質に適用した。しかし、その際十分な反応性で反応が進行しなかったため改めて本反応の基質検討を行ったところ、2-位にフッ素置換基を有するベンズアミドから得られる基質を用いた場合本反応が良好に進行することを新たに見出だした。また同時に若干ではあるがエナンチオ選択性の向上がみられ95%eeとこれまでで最も高い立体選択性で望みのマイケル付加体を得ることができた。その後、ここで得られた光学活性マイケル付加体を利用してナカドマリンAの中心骨格の一つであるピペリジン構造への誘導化を検討した。種々の検討の結果、同じマイケル付加体から3種類の合成ルートを経由して、酸化度の異なる3種類のピペリジン誘導体へと導くことに成功した。 2、新規不斉チオウレア触媒の開発 γ-ヒドロキシエノンに対する有機ホウ酸求核種の不斉付加反応を用いて新規なチオウレア触媒の開発を試みた。分子内に水酸基を有する様々なチオウレア触媒を検討したところ、芳香族水酸基を有するチオウレア触媒が反応を良好に触媒することが分かった。検討の結果、trans-シクロヘキサンジアミンとサリチルアルデヒドから導かれたイミノフェノール構造を持ったチオウレア触媒を新たに開発し、本触媒を用いることで最高99%収率、95%eeと満足のいく値で本反応が進行することを見出した。また、本反応で得られた光学活性マイケル付加体の分子内の水酸基を利用することでシクロプロパン化合物やビシクロ[3,1,0]骨格を有する化合物へと導くことにも成功した。 以上の結果は、環境に配慮した新しい有機合成プロセスの開発において重要な知見を与えたものと思われる。
|
Research Products
(3 results)