2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03360
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
富松 江梨佳 Kyushu University, 芸術工学研究院, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 運動知覚 / 錯視 |
Research Abstract |
ある特定の輝度配列を持つ静止画は、周辺視野で観察すると運動が知覚される。この錯視のメカニズムの究明は、運動知覚メカニズムの一端を明らかにすることができ意義深い。本研究の目的は、実験心理学的手法を用い、輝度またはコントラストに対する局所的な順応が静止画における運動知覚メカニズムに寄与するかどうかを確かめることである。具体的には以下のテーマについて調査・分析を行なった、または今後行なう予定である。(1)局所的な順応状態から回復する条件、(2)局所的な順応を変化させる条件、(3)局所的な順応が視覚システムのどの段階で起きているか、さらに、(1)、(2)、(3)の結果と既知の特性を検討し、運動知覚が生起するメカニズムを考察する。本年度発表した成果のうち特に重要であると考える成果について以下に記述する。テーマ(1)に関して、網膜上での刺激の位置が滑らかに動く条件と断続的にジャンプするように移動する条件における錯視量の比較を行なった。その結果、滑らかに動いた場合錯視はほとんど知覚されないが、断続的に移動した場合錯視ははっきりと知覚された。これは、運動知覚を回復させるためには網膜像を移動させる必要があるが、運動知覚自体を再度生起させるためには網膜像を一定期間静止させる必要があるということを示唆する成果である。また、テーマ(2)に関し、錯視を引き起こす刺激図形に隣接した部分とそれ以外の広域的な背景部分の輝度をそれぞれ変化させ錯視量を測定した。その結果、刺激に隣接する輝度ではなく広域の背景輝度がこの錯視の見えに影響していること、背景輝度の変化に対して順応していく過程ではなく、刺激と同時に提示されているときの輝度自体が重要であるという結果を得た。これは、刺激に対する順応が広域背景輝度によって変化させられた可能性を示唆する成果である。今後さらに研究を進めてメカニズム解明につなげたい。
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Research Products
(4 results)