2008 Fiscal Year Annual Research Report
細胞極性と遺伝子発現プログラムの可視化を基盤とした植物初期胚の体軸獲得機構の解明
Project/Area Number |
08J03415
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
植田 美那子 Nagoya University, 理学研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 分子生物学 / 初期発生 / 転写因子 / 体軸形成 |
Research Abstract |
高等生物は複雑な構造をもつが、それらは全て受精卵という単一細胞に由来する。高等植物の受精卵は高度な細胞極性をもち、その不等分裂によって異なる発生運命をもつ娘細胞を生じる。この際の軸性は成熟体の頂端-基部軸に相当するが、初期発生の過程で体軸が形成される仕組みについては現在でもほとんど分かっていない。 シロイヌナズナのホメオボックス型転写因子をコードするWOX8(WUSCHEL RELATED HOMEOBOX8)遺伝子は受精卵で発現し、その不等分裂後には一方の基部側の娘細胞にのみ発現が受け継がれる。我々は、このようなWOX8の非対称発現は既知の軸性因子には依存しないこと、およびその発現は複数の異なるcis配列により冗長的に制御されることを見出した。これらのcis配列に結合する転写因子群を酵母oneハイブリッド法により同定し、詳細な機能解析を行った結果、これらの新規な転写因子群はWOX8遺伝子のcis配列へ直接結合して転写を活性化することで、WOX8の非対称発現を制御することが明らかとなった。 これら転写因子群の欠損株ではWOX8遺伝子の発現だけでなく、受精卵の細胞極性や胚の軸性も損なわれたことから、これらは体軸形成と維持に必須の新規な制御因子群であることが明らかとなった。一般的に動物の体軸制御に重要な転写因子とは、雌組織または卵細胞で働く母性因子であることが知られている。一方、本研究で得られた転写因子は雌と雄のどちら由来でも機能し、受精直後に転写を誘導することで体軸形成を制御する新規なタイプの転写因子であることが明らかとなった。したがって、本研究は動物で一般的な母性因子による体軸形成とは異なった方法で植物の体軸形成がなされることを示した初めての例となった。
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Research Products
(2 results)