2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
08J03435
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
角渕 由英 東京大学, 大学院・理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 分子磁性体 / シアノ架橋型金属錯体 / 光磁性 / 相転移 / ポーラス磁性体 |
Research Abstract |
オクタシアノ金属酸イオン[M(CN)_8]^<n->(M=w,Mo,Nb)は、配位構造や電子状態が柔軟であり、様々な機能性分子磁性体が報告されてきた。我々は、オクタシアノ金属錯体を用いて、多孔性と磁気相互作用を併せ持つポーラス磁性体、Cu_3[W(CN)_8]_2(ピリミジン)_2・8H_2Oを合成した。この磁性体において、水蒸気と1-プロパノール蒸気による、可逆的なアルコール蒸気応答性を報告している(Ohkoshi et al.J.Am.Chem.Soc.,129,3084-3085(2007))。さらにこの系では、1-ブタノールや2-プロパノールといった、嵩高い分子を包接しても、強磁性相転移を保つことを見出している(Y.Tsunobuchi et al.,Chem.Lett.36,1464(2007))。本年度は、キラルな(R)-2-ブタノール分子の導入によるキラリティの誘起を目指した。水と(R)-2-ブタノールの混合溶媒を用い、Cs_3[W^V(CN)_8]・2H_2O溶液をCuCl_2・2H_2Oとpyrimidineの混合溶液に滴下することでアルコール分子を包接した単結晶として得た(CuW(R-2BuOH))。結晶構造の決定は単結晶X線構造解析、磁気測定は超伝導量子干渉素子(SQUID)を用いて行った。 CuW(R-2BuOH)は、キラルな空間群である単斜晶C2に結晶化し、Cu^<II>(S=1/2)とW^V(S=1/2)が交互にシアノ基で架橋された三次元構造をとっており、結晶のb軸方向の一次元細孔中に、結晶水及び(R)-2-ブタノール分子が水素結合のネットワークを形成し、包接されていた。磁気相転移温度(T_c)は7.5K、保磁力(H_c)は100Oeであった。本物質において、キラルゲストを導入することでキラル磁性体へと変換する事に成功した。Cu-[W(CN)_8]ポーラス磁性体は、様々なアルコール分子を包接し、ゲスト分子に依存して結晶構造及び磁気特性が変化することが分かった。さらにゲスト分による機能性の付与にも成功し、強磁性錯体における構造と機能性の合理的設計に対する一つの指針を示したといえる。
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Research Products
(11 results)