2008 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカにおける薬剤の普及と医療状況の変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
08J03437
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
濱田 明範 Hitotsubashi University, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 薬剤 / 保険 / 生物医療 / 政策 / 商品 / 物質性 / 未来 / 身体 |
Research Abstract |
今年度に実施した研究から明らかになったのは、以下の2点である。 まず、ガーナ南部の農村部における薬剤の普及状況は、無認可の薬剤供給者、ケミカルセラー、ヘルスセンターという3つの薬剤供給者と当該地域の薬剤の流通を統制しようとする薬局評議会の複雑な相互関係と関連している。いわゆる「第三世界」の多くの地域と異なり、ガーナ南部には無認可の薬剤供給者は多くない。代わりに、ケミカルセラーという独特の薬剤供給者が、薬剤の普及に中心的な役割を担っている。ケミカルセラーが販売できる薬剤は制限されているが、法律上禁止されている抗生物質や注射なども頻繁に販売されている。ケミカルセラーを監督する立場にある薬局評議会も法律違反を実質的には容認している。この背景には、ケミカルセラーを取締まることによって無認可の薬剤供給者が増加する可能性があると考えられる。 次に、ガーナ南部の農村部においては薬剤が薬剤についての知識と必ずしも一体となって普及しているわけではない。同時に、薬剤は当該地域の人々によって明確に表明され、多くの人々に共有されている「現地の認識枠組み」に基づいて薬剤を使用しているわけではない。このことは、これまでの医療人類学や医療社会学で当然視されてきた治療行為と治療論理の緊密の結びつきに疑問を投げかけるかのであり、ホワイトやラストといったサブサハラ・アフリカを対象地域とする医療民族誌家たちが指摘してきた治療におけるプラグマティズム・文化のフラックス状況と合致している。
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Research Products
(2 results)