2009 Fiscal Year Annual Research Report
西アフリカにおける薬剤の普及と医療状況の変容に関する人類学的研究
Project/Area Number |
08J03437
|
Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
浜田 明範 Hitotsubashi University, 社会学研究科, 特別研究員(DC2)
|
Keywords | 医療人類学 / ガーナ / 藥剤 / 血 |
Research Abstract |
平成21年度の主な研究成果は、同年10月から翌年3月にかけてガーナ南部の農村地帯で実施した現地調査を通じて、当該地域における身体観を薬剤の服用方法との関係から明らかにしたことである。 当該地域では、ごつい身体を持つ者は病気になりにくいと考えられているが、身体を強くするために行われるのは、例えば食生活の改善や日々の運動というよりは、「モジャ・デュルmogya duru(血の薬)」というカテゴリーの薬の服用である。モジャ・デュルには、薬剤、薬草、ハーブ加工品の3つの形状のものがあるが、いずれに薬にも共通するのは、1.定期的に服用されていることと、2.明確な身体感覚の変容を伴わないこと、の2つである。症状が改善すると、抗生物質や抗マラリア薬の服用が途中で中断されることが多い中で、このような特徴を持つモジャ・デュルの服用形態は、極めて特徴的である。 モジャ・デュルの服用が当該地域で好まれている背景には、1.大きな社会問題となっている貧血に対する治療と予防のために鉄剤(モジャ・デュル)の服用が強力に推進されていること、2.マスコミを通じてハープ加工品(モジャ・デュル)が頻繁に宣伝されていること、3.鉄剤やハーブ加工品といったモジャ・デュルを容易に入手可能にする薬剤の流通システムの3つがある。 以上のように、平成21年度の研究では、当該地域における独特の身体観のあり様とそれを方向付けていくような文脈を明らかにすることができた。これは、世界各地で暮らす人々の健康観・身体観の多様性を明らかにするという学術的な意義を持つが、同時に、当該地域における保健政策をデザインする際にも重要な視点を提供するものである。
|
Research Products
(3 results)