2009 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー放射光を活用した銅酸化物高温超伝導体のノード準粒子構造の解明
Project/Area Number |
08J03438
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安斎 太陽 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 銅酸化物高温超伝導体 / 超伝導ギャップ |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体は、ホールのドーピング量で超伝導転移温度や物性が大きく変化するため、ドーピング依存性が高温超伝導機構解明の重要な鍵となる。本年度は、二重層銅酸化物高温超伝導体Bi2212のノード方向準粒子分散のドーピング依存性を行った。測定はドーピング量が異なる過剰・最適・不足ドープ領域の複数の試料について角度分解光電子分光実験を行った。低エネルギー放射光の高い波数・エネルギー分解能とバンド選択性を活用することで、不足ドープ領域においてもCuO_2二重層に由来する結合と反結合バンドを分離観測することに成功した。それぞれの準粒子の有効質量を詳細に決定したところ、フェルミ準位近傍15meV付近で電子とある特定のエネルギーをもつ集団励起(ボソン)が結合し、フェルミ準位に向かって有効質量が増大し続けていくことを明らかにした。この振る舞いは、ホール濃度が減少するにつれて顕著になり、不足ドープ領域で強い繰り込み効果が働いていることを示している。前々年度までの成果から、私は不足ドープ領域で超伝導に関与するd波のギャップ領域が縮小し、擬ギャップ領域が拡大することを明らかにした。以上のことを考慮すると、ノード方向で増大した相互作用は擬ギャップの形成に関与しており、不足ドープ領域における超伝導転移温度の減少の原因となっていることが示唆される。 二層系銅酸化物高温超伝導体の薄膜作製技術の確立とその場観測に向けて、広島大学放射光科学研究センターにすでに設置されているパルス・レーザー堆積装置の改良と薄膜単結晶試料作成を行った。
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Research Products
(3 results)