2008 Fiscal Year Annual Research Report
低エネルギー放射光を活用した銅酸化物高温超伝導体のノード準粒子構造の解明
Project/Area Number |
08J03438
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安斎 太陽 Hiroshima University, 大学院・理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 角度分解光電子分光 / 強相関物質 / 高温超伝導体 / 超伝導ギャップ |
Research Abstract |
銅酸化物高温超伝導体は、ホールのドーピング量で超伝導転移温度や物性が大きく変化するため、ドーピング依存性が高温超伝導機構解明の重要な鍵になる。本年度は、二重層銅酸化物高温超伝導体Bi2212のノード近傍準粒子構造のドーピング依存性を行った。測定試料はホールドープ量の異なる過剰・最適・不足ドープ領域の3つを用い、角度分解光電子分光実験を行った。低エネルギー放射光のバンド選択性と高い分解能を活用することで、CuO_2二重層に由来する結合と反結合バンドのフェルミ面を全波数空間で分解観測することに初めて成功した。それぞれのバンドについて超伝導ギャップの波数依存性を詳細に決定したところ、両バンドのギャップの大きさと波数依存性がほぼ同じであることを明らかにした。これは、超伝導電子対を形成する引力相互作用が両バンドで同等に作用していることを示唆している。また、過剰ドープ領域の超伝導ギャップは全波数空間でd波の理論曲線とよく一致していたが、ホール濃度の減少とともにd波からのズレが大きくなることを明らかにした。特に、不足ドープ領域においては、d波のギャップ構造はノードごく近傍に限られており、この現象が不足ドープ領域で超伝導転移温度を下げている原因であると考えられる。上記の研究内容については、学会・研究会([学会発表])で成果報告を行った。 広島大学放射光科学研究センターにすでに設置されているパルス・レーザー堆積装置について、ベーキング等で真空度と質の改善を行い、薄膜単結晶試料作成の準備を行った。
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Research Products
(4 results)