2008 Fiscal Year Annual Research Report
言語の身体性と主観性に関する感覚・知覚表現の認知的研究
Project/Area Number |
08J03464
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高嶋 由布子 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 認知言語学 / 意味論 / 知覚動詞 / 多義語 / 複合動詞 / 自他 / 感覚モダリティ / メタファー |
Research Abstract |
認知言語学の観点から、言語に人間の身体能力のどの側面がどのように反映し、主観と客観がどのように表現されているのかを明らかにするため、知覚の表現について分析した。知覚は他者と共有できる外的対象と、自己にしかわかちない主観的な内的世界を繋ぐものである。 認知言語学では「身体的経験」を基盤に、抽象概念の理解を説くが、この境界に関しての考察は不足している。人間の認識がどこまで日常言語上でコードされるかについての研究は従来の意味論では扱えなかった問題を認知言語学で精緻に扱っていくために必要な課題である。ここでは知覚というカテゴリーに感性的表現と客観的で身体的な表現の接点があることに焦点を絞り、とくに、視覚や触覚といった五感の感覚モダリティによる言語表現の異同に観点を据えた。 本年度は五感の知覚動詞の文法的特性と意味構造について明らかにするたに、まず他動詞の意味拡張を意味の二面性(積極的な情報探索か受け身的な情報受容か)から整理し、多義の構造を視覚化した。さらに、他動詞と自動詞の違い、複合表現をアスペクトと主観性の観点から分析した。たとえば、視覚(見る/見える)聴覚(聞く/聞こえる)は自他対応があるのに、嗅覚の表現には同じ対応関係がない(嗅ぐ/*嗅げる、匂う)。これをアスペクトの問題として扱い、視点とアスペクトの接点をLangackerのオンステージモデルを適用して説明できることを指摘した。また、触覚表現に類する接触の表現「さわる・ふれる」の意味拡張(気に{さわる/*ふれる})について、他動性の観点から分析を進め、意味拡張の際に主体の意図性の度合いが色濃く反映されることが結果として得られた。
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Research Products
(14 results)