2009 Fiscal Year Annual Research Report
言語の身体性と主観性に関する感覚・知覚表現の認知的研究
Project/Area Number |
08J03464
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高嶋 由布子 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 認知言語学 / 意味論 / 知覚動詞 / 空間配列 / 虚構移動 / 類型論的意味論 / 五感 / メタファー |
Research Abstract |
認知言語学の観点から、日本語の知覚動詞のふるまいを明らかにするため、今年度は特に空間関係に注目し、五感それぞれの特徴が言語上にどのように現れるのかについて分析した。「庭から花{を見る/が見える}」と「庭から笛の音{を聞く/が聞こえる}」といった知覚者と対象の位置関係について、視覚と聴覚では、同じ場所格を使った構文でも空間関係が反転することに着目し(視覚では他動詞で知覚者が庭に居るが、聴覚では自動詞で音源が庭にある。あとの空間関係は両義的)、現在まで指摘はされつつも明らかになっていなかった自他対応と視点の問題をTalmyの虚構移動と主観的表現の人称制約の観点から整理した。昨年度に得られた知覚の複合動詞の生産性や軽動詞を使った慣用表現にも共通の、感覚モダリティ毎の空間配列のイメージ・スキーマにゆるやかに従って各々の感覚モダリティの空間関係が言語表現上に現れることを明らかにした。 夏にはアメリカ言語学会の夏期講座に参加し、世界中から集った言語学者と意見を交換し、特に中国語と比べたときの日本語の味覚の漢字使用について(苦いと苦しいは中国語ではメタファー的な意味拡張として位置づけられる)新たな知見を得た。また、優秀若手研究者海外派遣事業をうけオランダ、マックス・プランク心理言語学研究所に2010年1月から3ヶ月間滞在し、類型論的意味論の観点から思考と言語について世界中の言語でデータを集めている「言語と認知グループ」に滞在し、申請者と同様の課題について心理学的な実験を用いてアプローチしている「知覚の言語プロジェクト」に合流し、議論を深めた。同じ身体を持ちながらさまざまな環境に住む人間の知覚は、外的環境にも左右されるという点を考慮に入れつつ、世界的に見ても記述の進んでいる日本語の特異な点、即ち一致がないのに主語の代名詞を省略できる点と主観的表現に人称制約がある点に着目し、考察を進め前述の結論を得た。
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Research Products
(5 results)