2008 Fiscal Year Annual Research Report
生殖的形質置換と生態的形質置換を介した陸産貝類の種分化機構
Project/Area Number |
08J03560
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀田 勇一 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 陸産貝類 / 種分化 / 生殖隔離 |
Research Abstract |
生物の種多様性を知る上で、種分化や多様化の過程を理解することは極めて重要な課題である。本研究ではナンバンマイマイ科ニッポンマイマイ属とカワザショウガイ科ホラアナゴマオカチグサを材料に、種分化パターンや生殖隔離の成立、および近縁種共存の仕組みの解明を試みた。 ニッポンマイマイ属では、沖縄本島北部で同所的に生息する樹上性の姉妹種2種(オキナワヤマタカマイアイ・シラユキヤマクカマイマイ)の間で、生殖器の形態に形質置換が見られることを発見した。本発見は昆虫以外で生殖器形態の形質置換が確認された世界初の例であり、陸貝のみならず他の無脊椎動物においてもこのような生殖隔離機構が存在する可能性を示した点において重要である。また、沖縄本島には地上性のシュリマイマイも生息するが、この中にも隠蔽種が存在することを明らかにした。この隠蔽種間の生殖隔離は完全ではなく、生殖器形態に種間で差の見られる部位も樹上性種の場合とは異なっていたことから、今後樹上性種との比較を行うことで、生殖隔離の成立に何か重要かを明らかにできると考えられる。 ホラアナゴマオカチグサは真洞窟性の微小な陸貝で、東北地方から琉球列島までの石灰洞窟に分布する。全国の50以上の地点から本種を採集し分子系統解析と形態の比較を行ったところ、これまでホラアナゴマオカチグサと認識されていた貝には属レベルで異なる2つの系統が存在することが判明したほか、各系統内でも石灰岩地ごとに大きな遺伝的分化が見られ、少なくとも40種以上に分けられる可能性が示唆された。また、非洞窟性の近縁種を含めた系統解析からは本種群の洞窟進出の経路は他の陸棲洞窟動物にはみられない特異なものである可能性が示唆されており、今後より厳密な考察を行うことで、洞窟生物の進化について新たな知見をもたらすことができると考えられる。
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Research Products
(3 results)