2009 Fiscal Year Annual Research Report
生殖的形質置換と生態的形質置換を介した陸産貝類の種分化機構
Project/Area Number |
08J03560
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
亀田 勇一 Kyoto University, 地球環境学堂, 特別研究員(DC2)
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Keywords | 陸産貝類 / 種分化 / 牛殖隔離 |
Research Abstract |
生物の種多様性を知る上で、種分化や多様化の過程を理解することは極めて重要な課題である。本研究ではナンバンマイマイ科とカワザンショウ科、イツマデガイ科貝類を材料に、生殖隔離の仕組みや多様化パターンの解明を試みた。 ナンバンマイマイ科では、沖縄本島北部で同所的に生息する近縁な2種(オキナワヤマタカマイマイ・シラユキヤマタカマイマイ)の間で、生殖器の形態に形質置換が見られることを発見した。本発見は昆虫以外で生殖器形態の形質置換が確認された世界初の例であり、陸貝のみならず他の無脊椎動物においてもこのような生殖隔離機構が存在する可能性を示した点において重要である。また、やはり沖縄本島に生息する、別亜属のシュリマイマイにも隠蔽種が存在することを明らかにした。後者での生殖隔離は完全ではなく、生殖器形態にみられる差異も小さいことから、両者の比較を通じて生殖隔離の成立に何が重要かを明らかにできると考えられる。 カワザンショウ科では、日本固有かつ科内で唯一の真洞窟性陸貝であるゴマオカチグサ属について、本年度の野外調査で新たに分布の新記録かつ新種とみられる個体群を幾つか見出した。また、分子系統解析と分化年代推定の結果からは、本属の洞窟進出の経路は他の陸棲洞窟動物にはみられない特異なものであると考えられ、洞窟生物の進化について新たな知見をもたらす可能性がある。また、これに近縁なイツマデガイ科についても解析を行った。本科は基本的に水生であるが、日本でのみ陸棲種が進化していることが知られている。分子系統解析と分岐年代推定を行った結果、本科の陸棲種の進化は多雪地域の形成と密接に関わっていることが明らかになった。これらの結果はカワザンショウ科における生息環境の変遷を議論する上でのヒントにもなりうる。この結果はほぼ論文執筆を終えており、本年5月中の投稿を予定している。
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Research Products
(2 results)