2008 Fiscal Year Annual Research Report
日本映画史におけるメロドラマ的想像力の研究-長谷川伸文学の映画化作品を中心に
Project/Area Number |
08J03569
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
羽鳥 隆英 Kyoto University, 人間・環境学研究科, 特別研究員(DC2)
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Keywords | メロドラマ / 時代劇映画 / 長谷川伸 / 男性性 / 女性性 / 西部劇映画 / 股旅映画 / 幕末映画 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる平成20年度は博士論文執筆に向けた基礎固めの年度として本研究の鍵概念であるメロドラマについて英語圏を中心とする先行研究の渉猟に努めた。とくに西洋を起源とするメロドラマの概念を日本映画研究にいかに応用するかに注意を払った。一方で本研究の分析対象である長谷川伸文学の映画化作品について映像資料を収集および分析した。とりわけ日本的な撮影所システムの崩壊以降に高度な自己言及性を備えつつ製作されたTV映画作品『長谷川伸シリーズ』を鑑賞できたことは従来の日本映画史の空白を埋める意味において有意義であった。こうした成果を総合して長谷川伸文学の映画化作品を中核とする股旅映画の約束事について考察しつつ比較映画研究のための理論的基盤の整備に努めた研究論文「運命線上に踊る男と女-マキノ雅弘『いれずみ半太郎』分析」を日本映画学会編集の映画研究論集に投稿したが同論集は投稿論文の不足のため企画延期となったので再募集を待って再投稿する予定である。そのほか下記の研究を実施した。(1)神戸映画資料館が開催した連続講座《加藤泰の世界》について同館HP上に報告を執筆した。加藤泰は長谷川伸の戯曲を映画化しているほか任侠映画でも長谷川文学と深い影響関係にある映画を創造しているため今回の機会は研究の深化に寄与した。(2)米国議会図書館やNY近代美術館などで一次資料を収集し無声映画期の西部劇映画『地獄の辻』などを鑑賞した。今回の調査は股旅映画と西部劇映画との関係を考察していく第一歩となった。(3)第6回京都映画祭において長谷川伸原作の股旅映画『いれずみ半太郎』ほか一本の作品解説を執筆した。
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