2009 Fiscal Year Annual Research Report
曲面型ナノ構造体における超伝導発現メカニズムの解明とナノ冷却素子への応用
Project/Area Number |
08J03576
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
平 久夫 Hokkaido University, 大学院・工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Keywords | 曲面量子系 / 低次元電子系 / メゾスコピック系 / 電子輸送現象 / 幾何学的効果 / 曲率テンソル |
Research Abstract |
本年度は、曲面型ナノ構造体における超伝導発現機構に関する研究を行った。ナノ構造体が曲面構造を有する場合、フェルミ粒子の固有状態・輸送特性及びボーズ粒子の伝搬特性は平面系のそれとは質的に異なる。従って、それらの相互作用により生じる超伝導体の発現メカニズムも平面の場合とは非常に異なることが予想される。そこで、本研究では曲面型物質中のフェルミ粒子・ボーズ粒子の伝導・伝搬特性を、幾何学的曲率テンソル値関数を用いて定式化した。解析の結果、フェルミ粒子はあたかも電磁場中を運動するかのように振る舞うことが、より詳細に明らかとなった。また、ボーズ粒子の運動を記述する固有関数が、上述の幾何学的テンソル値関数に依存し、平面波・減衰振動・減衰波になることを予測した。これらの成果をもとに、幾何学的効果がBCS理論・エリアシュベルグ理論に与える影響を考察した結果、新たな理論スキームを確立できることを示唆するものであった。これは、曲面型超伝導体の発現メカニズムが従来のものとは質的に異なることを意味しており、超伝導転移温度・エネルギーギャップ構造・励起スペクトル等の超伝導諸特性が、バルク・低次元超伝導体のそれとは大きく異なることを示唆する点において、重要な意義がある。また、捩じれた原子構造を有する量子リング中には、捩じれに起因する永久電流が生じることを理論的に示した。この永久電流はリング中央を、磁場ではなく電流を通すことで生じるもので、基礎物理的に興味深い結果である。この結果は、超伝導体の磁場侵入長が幾何学的涙じれの関数であることを意味する。さらに、具体的物質パラメータを用いて、誘起された永久電流の大きさを見積もると、実験的に観測可能な大きさであることが明らかになった。この結果は、本研究で得られた理論予測を実験的に実証可能であることを示した点で極めて重要である。
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Research Products
(4 results)