2008 Fiscal Year Annual Research Report
モンスーンアジアにおける発酵茶文化の地域固有性とその系譜
Project/Area Number |
08J03636
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 綾子 (佐々木 綾子) Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 発酵茶 / モンスーンアジア / 照葉樹林文化 / 森林・資源利用 / 土地利用変化 |
Research Abstract |
20年度前半は国際会議および2箇所の一般講演で、タイ北部における発酵茶生産の変遷および発酵茶文化伝播に関する考察について発表し、今後の研究課題として発酵茶を文化的側面だけでなく山地における重要な換金資源としての社会経済的側面も重要視することをアピールした。 2度のタイ調査では、換金資源としての発酵茶生産の変遷および発酵茶を通じた高地(生産地)-低地(消費地)の関係性に主眼を置いた調査を行った。調査では、2002年より調査を継続しているタイ北部チェンマイ県P村において、高齢者に向けた聞き取り調査を行った。その結果から以下の点に注目した。1)P村では発酵茶と米・塩を交換していた。売値は固定的ではなく、村側から提示することができた。2)仲買人の多くは村人と近縁関係にあり、そのため安定的な価格を提示されていた。3)かつては茶園内でウシを放牧しており、仔ウシの販売は発酵茶を補填する大きな収入源であった。発酵茶出荷に車両を導入してからウシを売ってしまい、現在発酵茶市場が不振であるが他の収入源がないため発酵茶以外の生業を模索している。4)近年は村人自身が市場へ卸す例もあるが、売値は低い。これらから発酵茶生産村の生業戦略として以下の点がうかがえる。1)発酵茶自体の長期保存が可能という特長により、市場が好調の時期を待ち生産物を販売することができた。2)低地に居住する近縁者を仲買人にすることで、売値の変動を防ぎ、また確実な出荷経路を確保した。3)茶園の多角的利用(茶・放牧)により発酵茶市場不振時の収入源を確保することが可能であった。4)発酵茶生産の低迷は仲買人の減少による低地とのネットワーク崩壊にも起因するのではないか。今回の調査で示唆された発酵茶生産村を基点としたネットワーク構築を含む生業戦略をもとに、今後は発酵茶生産地とそれを内包する地域との係わり合いを明らかにし、各地の比較研究を行いたい。
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Research Products
(2 results)