2009 Fiscal Year Annual Research Report
モンスーンアジアにおける発酵茶文化の地域固有性とその系譜
Project/Area Number |
08J03636
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
澤田 綾子 (佐々木 綾子) Kyoto University, アジア・アフリカ地域研究研究科, 特別研究員(PD)
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Keywords | 発酵茶 / モンスーンアジア / 照葉樹林文化 / 森林資源利用 / 生態史 |
Research Abstract |
タイ北部における発酵茶市場および発行茶生産村の動向についての調査から以下の点が明らかになった。1)発酵茶市場規模縮小の速度が緩やかになりつつある、2)生産村における収入源の多様化が進行する一方で、発酵茶生産を未だ生業基盤とする世帯が大部分を占める、3)発酵茶生産を「安定した生業」と認識し積極的に維持する傾向がみられた、4)低地での就労目的で移住していた若年層が帰村する傾向が確認された。報告者はこれまでの調査研究で、発酵茶市場の動向を鑑みるに今後発酵茶生産から他生業への緩やかな移行が行われることを推測してきたが、この結果から今後も主生業として発酵茶生産を主生業として維持しつつ、茶園の一部を他目的(コーヒー栽培や放牧)に利用することが予測された。これは上述した市場での傾向とあわせ、急速に都市化が進むタイ北部において、発酵茶の嗜好品としての価値は低下したものの、文化的要素としての価値が維持されることにより一定の安定的な供給が必要とされていることによると推測される。これらの結果から、今後の発酵茶生産の動向を予測するために、発酵茶の持つ生業としての安定性の再評価、および文化的意義を再認識する必要性が示唆された。さらに、未だ発酵茶が嗜好品として自給されているラオス、また唐の時代から既に発酵茶の交易路が成立していた中国南部の結果と比較され、発酵茶を通じた地域連関とそれを支えたより広範囲における社会経済システムについての考察へと繋げたい。
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Research Products
(3 results)